朽ち果てる
[動タ下一][文]くちは・つ[タ下二]
1 すっかり腐ってもとの形をなくしてしまう。「―・てた山小屋」
2 世に知られないままに死んでしまう。「市井 (しせい) の片隅に―・てる」
数年前、長崎の軍艦島へ行った。
観光で行ったので、建物の中や奥へはいけなかったのだが、船から見える朽ち果てた建物に、当時大勢の人々が住んでいたのかと思うと、興奮した。
上陸して、ガイドさんの話を聞きながら写真を撮った。
外から眺めるだけなのは物足りない。
けれど、仕方がないのでミュージアムに行って映像や写真を見て想いを馳せる。
ひっそりと、そこに、しあわせがあって
嫌な感情も同時に蠢いて、私が過ごした何十年があって、彼らの夢や希望をのせていたものが、朽ち果ててゆく。
愛情がたくさん詰まっているのに、
それは今の時代に逆行したように、当時のまま、何年も何十年も雨風にさらされ、殆どメンテナンスもされずに、朽ちはじめていく。
そう、当時のままなのだ。
何十年たっても、柱の傷はそのままあるし、
置いてきたプリントやテストや笛も、そのままそこにある。
朽ちてきているけど、うちに帰れば、あるのだ。
朽ちてきているけど、うちは、あの当時から変わっていない。そのままなのだ。
いつのまにかなくしてしまったもの
捨ててしまったもの。もう2度と出会えないもの。
大抵の人はそうかもしれないけれど、
まだ存在している幸せ。
愛情がわきます。