高校を中退して、どうして良いかわからなかった16歳の私は、当時付き合っていた年上の彼の勧めで、読書を始めた。
いちばん最初に読んだのは、彼に借りた村上春樹のデビュー作だった。
タイトルがカッコいい。書いてある事がカッコいい…と思って、それから読書が好きになった。
でも、数多くの読書体験を経て、日本の作家の中で誰がいちばん好きかと訊かれたら、中上健次しかいない。
『若い子が一度は通る道』として片付けないで欲しい。彼は、私の根底に触れるような作品を残した作家なんだ。
十九歳の地図
岬
蛇淫
赫髪
などなど。
20代の頃、枯木灘を読んで、泣いた。小説を読んで泣いたのは初めての経験だった。
そして、彼がもうこの世を去っていると知って、とても悲しかった。
最近は、老眼がはじまったのと、集中力が低下してあまり読書をしなくなったのだけれど、
また読書をしようとおもう。
16歳の夏、好きだったのはレニークラヴィッツのIt Ain't Over Til It's OverとジャミロクワイのEmergency on Planet Earth だった。
実家のベランダにレジャーシートを敷いて確か村上龍のコインロッカーベイビーズを読んでた。
変わって行くものと変わらないもの。
変わった方がいいものと変わらない方がいいもの。
あれから30年がたった。
私はあの頃と変わらない気持ちを、持っていたりいなかったり。