私はわりと子供の頃から
静寂や静謐が好きである。
誰もいない明け方が好きだった。
喘息の発作が出ると、苦しくて眠れない夜を、一人で折り紙を折って耐えた。
子どもにとっては発作止めの吸入薬の使い方が難しかったのか、効かなかった。
一度やると、4〜5時間間隔を空けてくださいと言われてたので、つぎの時間が来るまで耐えてたのだ。
家族が寝静まっている中、一人で明るくなる空を見てた。ひとりで見る空はとても綺麗だった。
浜口陽造の『さくらんぼと青い鉢』を見たのは19歳の時。広島の現代美術館だった。
柔らかな黒のなかに
鉢に入ったさくらんぼが静かに収まり、
浮かび上がった五つのさくらんぼは鮮やかな赤をたたえている。
あの時以来、その静寂の美しさを何年も忘れられずにいたのだが、
吉祥寺に遊びに行った時に浜口陽造記念館に出会えた。
それ以来ちょくちょく足を運び、見るたびに
やはり良いと感動する。
ハマスホイの画を初めて見た時もはっとした。
私が子どもの頃から見ていた静謐をたたえていたからだ。
コロナでハマスホイ展が見れず、もう何年も経つ。見たい。
画集じゃなくて、目の前で。