押入れのカフェ

家の近くに、小さなカフェがあります。

古くて小さな一軒家を改造した可愛らしいカフェです。

以前から気になっていたのですが、先日初めて入りました。

お店の方に案内された席は足下が一段高くなっており、奥まった形でコの字型でした。

椅子に座った私の頭の高さあたりの壁に、7、8センチくらいの跡がぐるりと付いていて、

漆喰できれいに塗られているけれど、改装前はここが押入れだったことに気づきました。

この跡は、押入れの上と下を分ける中板の跡です。

 

読みかけの本を開くよりも先に壁の跡をそっと撫でて、なんだか優しい気持ちになりました。

たとえ家を手放した後でも、こうやって元の家の面影がしっかり残されているなんて。

 

注文したレモンタルトは甘酸っぱくて、まるで自分が10代に戻ったみたいに懐かしい味。

それを今の私は苦めのコーヒーでぐっと流し込みました。